Crypto AI AgentとzkTLSを活用したユースケースと未来展望

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2024年末から2025年の始まりにかけて、Cryptoの文脈での AI Agent が大きな注目を集めました。トークン価格の高騰を経て、市場はすでに高値から大幅に調整が入っている状況で「幻滅期」にも見えますが、本質的な開発・ユースケースの拡大が進むタイミングでもあり、依然としてAI Agent は注目に値する分野といえるでしょう。

本記事では、Crypto業界の AI Agent がどのように一般的な AI Agent と異なるのかを整理しつつ、弊社が注目しているzkTLSとの組み合わせによる新たな可能性を事例を交えて考察してみたいと思います。

1. AI Agent とは?

一般的なAI エージェント

AI エージェントとは、環境と対話してデータを収集し、そのデータをもとに自律的に意思決定を行い、設定された目標を達成するためのソフトウェアプログラムです。人間が目標を設定し、それを達成するための最適なアクションを AI エージェントが自ら選択して実行します。

たとえば、コンタクトセンターの顧客対応を自動化する AI エージェントを考えてみましょう。エージェントは顧客に質問を投げかけ、内部文書を検索して解決策を提示します。顧客の反応や追加情報の有無によって、ケースを解決するか、あるいは人間の担当者にバトンタッチするかを判断します。これは従来の定型的なチャットボットとは異なり、学習を重ねて対応を最適化できる点に特徴があります。

参考: What is AI Agent? (AWS公式)

Crypto文脈におけるAI Agent

一方で、暗号通貨(Crypto)のエコシステムにおける AI エージェントは、ブロックチェーンと暗号通貨固有のタスクを自律的に処理するように設計されたシステムです。取引の自動化、ポートフォリオ管理、ブロックチェーン関連のさまざまなタスクを最小限の人間の介入で行い、データを分析・意思決定・アクション実行まで担います。

  • 暗号通貨のトレーディングや資産運用を自動化し、煩雑なやり取りを簡素化
  • 単にあらかじめ設定されたルールに従うだけのボットではなく、学習・適応していくのが特徴
参考: What Are Crypto AI Agents? (CoinGecko)

こうしたCryptoの AI エージェントは、単なるbotとは違い、LLM(Large Language Model)などの機械学習モデルの出力をフルに活用し、オンチェーン/オフチェーンのデータを分析してより複雑な指示を自律的にこなすことが期待されています。

2. zkTLSとは? そしてAI Agentとの融合

zkTLS とは?

「zkTLS」は、Zero-Knowledge(ゼロ知識証明)やMPC(マルチパーティ計算)の技術を用いて、「あるwebサーバーからあるデータを受け取ったことを第三者に証明する」仕組みです。既存の仕組みではプラットフォーム側がAPIを公開していない限り上記は実現できませんでした。zkTLSはユーザー側がプラットフォーム側の許可なく勝手に証明を作ることができます。さらにその証明はオンチェーンでも検証可能なため、web2データのweb3への橋渡しが進むことが期待されています。

詳しくは以下の記事をご覧ください↓

zkTLSについての考察と期待する理由

zkTLSの現在地と実用化に向けた課題



3. AI × zkTLS 事例①:AI Agentの真正性証明

AI Agent には、「本当にAIを使っているのか?」「中身は実は人力では?」と疑わしくなるケースも少なくありません。そこで、zkTLSを使って「AI Agentの応答が、実際に特定のAI APIサーバーから返ってきたものか」を検証可能にするユースケースが登場しています。

Primusによる事例

「Primus」というプロジェクトはzkTLSを活用して、Eliza Agent(対話型AIエージェント)の応答が正真正銘 AI(特定のAPI)からのものであることをオンチェーン上で検証可能にする仕組みを構築しています。

https://x.com/primus_labs/status/1878101990275690666

https://x.com/primus_labs/status/1878721426490073455

引用: With cryptography-backed #zkTLS, your agent is always on its best behavior—fully verifiable and trustworthy!


Primus X Artela: Partnering to Advance the Fully On-Chain #AIAgent Revolution @primus_labs has effectively leveraged #zkTLS to develop a fully verifiable Eliza agent.

このように、暗号学的な証明を用いて「AIがきちんとAIによる応答を返している」ことを担保できるのがzkTLSとの掛け合わせのメリットの一つといえます。たとえば、ユーザーが「このエージェント、本当にLLMを利用しているの?」と疑問を抱いたときに、オンチェーンの証明を確認することで、エージェントへの信頼性を高めることが可能です。

4. AI × zkTLS 事例②:zkTLSプロトコル自体へのAIの組み込み

もう一つ興味深いのは、zkTLSプロトコル自体にAIを組み込むというユースケースです。zkTLSの開発においては、以下のような課題が挙げられます。

  • 証明したいデータのPath(JSONの構造体)を具体的に指定する必要がある。
  • そのため、Webから証明したい特定のデータを取得しようとしても、開発者自身がそのアカウントを保有していないと認証が難しい
  • さらに、サイトやAPIの仕様変更が頻繁に起きるとメンテナンスコストがかさむ

こうした課題を、AI が以下のようにサポートするイメージです。

  1. 「このwebサイトから、○○という条件を証明するデータを取得して証明を作成して」とざっくり指定しておくことが可能に
  2. 開発者が条件を満たすアカウントを保有していない場合でも類推して指定しておくことができる可能性がある
  3. サイトやAPIの仕様変更があっても、AIが柔軟性を持っているので、個別に対応する必要が減少する

実際にReclaim Protocolではそのような取り組みがなされています。

https://x.com/madhavanmalolan/status/1870497769049509988

引用: !!! huge !!! we are now able to use AI to extract information from a website it has never seen before it is able to do a zk setup for a deterministic privacy preserving flow for any user that comes thereafter idea to prod in 3months!

5. これからの展望:AI (特にLLM) とブロックチェーンの接点

以上のように、Crypto文脈の AI Agent と zkTLS の組み合わせは、

  • AIの応答をオンチェーンで信頼性を担保しながら利用できる
  • AIがzkTLSの開発を補助し、さらなるユースケース開拓を加速する

といった未来への可能性を切り開きつつあります。2024年末〜2025年はブームが一服するようにも見えますが、技術的な進化と実サービスレベルのユースケース拡大が加速する時期でもあると言えます。

株式会社PontechではzkTLSの普及に向けてユースケースの創出に取り組んでおります。

zkTLSを活用したDapps開発に関するご相談がございましたら、ぜひ当社までお問い合わせください。

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About ponta

2019年からEthereumを中心にDapp開発に従事。スキーとNBAとTWICEが好き。

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